2015年直木賞受賞作家・東山彰良さん「流」を読みました。感想文

● 2015年直木賞受賞作家・東山彰良さん「流」を読みました。感想文

感動は冷めやらないうちに(笑)

良かったです、「流」。

ネタバレも含めて書きます。ご注意ください。ネタバレを含めないと感動のすべてが書けないので。

「流」を読み終えて印象に残っているのは、登場人物の「毛毛」。彼女がお嫁にいく時の雰囲気みたいなものが読み終わった後でもすごく残っています。

そして、そのあたりが一番イライラしました。なんでもっと毛毛とのことを描写してくれないのか。そのイライラを感じたまま読み進めていました(笑)

毛毛の態度がよそよそしくなって、主人公から気持ちが離れていってしまったことにもとても苛立ちました。なんていうか、私情として、「やっぱ女なんてそんなもんなんだろうな」みたいなぼくの女性に対しての嫌悪感を引っ張り出してくれた、というか(笑)

きっと、主人公の感じと似たような経験をしてきたからだと思います。そういうの引っ張り出してくれたことってすごいなっていうか。

毛毛と夏美玲のコントラストも良かった。毛毛の野生的な感じ、激しい感じ、匂いまで伝わってくる感じとは違って、夏美玲はもっと清潔感がある感じに伝わりました。毛毛の描写が焼き付いていたので、そう感じさせたのだと思います。

ドラクエ5でいうところの、ビアンカ(毛毛)とフローラ(夏美玲)という感じで(笑)

毛毛との恋愛は子供っぽさも残る感じだったりもっと激しくてまとわりつくような感じなのに対して、夏美玲との恋愛は大人のズルさもさりげなく描かれていたり、さっぱりしていて、そのコントラストも良かった。

夏美玲とのことはハッピーエンド風に終わりながらもハッピーエンドではないってことが分かっているので、その間になにがあったのか気になりますし、読み終わったあともそれがずーっと残ってる。

直木賞作家の人は、どんな作風でもこういった書き方をするのが普通な感じがしますね。描かれているけれど、本編では描かない、みたいな。

あと、描かれていたのが「祖父」のことというのもズルいなあ、と。きっとおじいちゃん、おばあちゃん子って多いと思うんですよね。きっと対象が「父」だとしたら感動はもっと減っていたんじゃないかと思います。そのあたりがよく考えられているような気がしました。

小戦との友情も、いろんなことがありながらも最終的には仲のいいところに戻ってこれるような関係って、大人になると貴重だと思うんですよね。大人になってから知り合う人と、そのような関係になるってなかなかないと思いますから。

子供の頃は、親やおじいちゃんに対して、大好きな人たちで、綺麗なイメージしかないですが、大人になってくるといろいろ察するようになってきて、「人間としてどうなのか」という視点で見れるようになってくると思います、良い意味でも悪い意味でも。

ただただでっかかった背中がどんどん小さくなってくる。

そうなってきたときの心情の変化というのも描かれていたり、描かれていないところで想像を促されたりして、良かった。

台湾や中国人の視点が多く描かれているので、日本人として読んでいるときに、日本人としてのアイデンティティに触れる感じも刺激的でした。台湾は親日の国として有名ですが、そうじゃない人もなかにはいるのかもなあ、とか。

毛毛のことも、美玲とのことももっと描いて欲しかったし、なにが起こっていたのか知りたいなあというのと、描いてほしくないなあ、想像上で止めておいてほしいなあというのがいったりきたりします。

いろんな感情やいろんなことがたくさん起こっていて、それぞれ整理がつかないうちにどんどん先に進んで、読み終えた今もごちゃごちゃです(笑)

このごちゃごちゃ感がとても面白いですね。